Skip to content
from the November 2017 issue

ロードキル

湾岸戦争がはじまって終わった年に、
わたしはひとりでカリフォルニアにいき 、
根っこもない家族もない、おしっこもうんこもでないような顔して、
そのままそこで暮らしました、
ある日だれかに、
What brought you here? 
ときかれてへどもどしました、
直訳すれば、何がはこんだか、あなたをここに、
どこの誰でもない、通りすがりの人でした、
何が、はこんだか?
風に? 飛行機に?
はこばれたのはほんとうだけど、
ほんとうは自分で来たんだよ、と思いましたが、
いえなかったです、咄嗟には、
その頃はまだ人のいってることばが聞きとれなかったし、
聞きとれても慣用句を知らなかったし、
いいたいことを伝えることもできなかった、それで、
WHAT BROUGHT YOU 問いの意味を
吟味し、吟味し、BROUGHT
HERE 理解し、
WHAT BROUGHT YOU HERE 考えました、
以下が答えです、
(考えついた頃には、質問した人はどこかへ行ってしまいました
だから今までひとりで答えてきました)
コヨーテを見るために
闇夜の音を聴くために
(むかしパパゴ族のフクロウ女の詩を読みました
In the great night my heart will go out,  大きな夜にはわたしの心が出てゆくだろう
Toward me the darkness comes rattling 闇がカラカラやって来る
In the great night my heart will go out. 大きな夜にはわたしの心が出てゆくだろう)
まじないの研究に
雨雲の観察に
コヨーテを殺すために

そのうち憑かれちゃった、殺すつもりで憑かれちゃった、
セックスに夢中になってそれしかしてなくてそれは男じゃなきゃだめで、
いてもたってもいられなくなってあたしのヴァギナは閉じたり開いたりし、
ペニスをのみこみ、
夜でも昼でも、
他人がいてもいなくても、
草の繁るなかにずんずん入っていった、
そしてスカートをめくりあげた、
コヨーテに憑かれてたんです、
したくてしてたんじゃないんです性欲なんかなかったんです、
ただカラダをぶつけて、
あ(イタイ)あ(イタイ)と声をあげて確認したかったんです、
わたしはどこにいるか
わたしは価値があるか
どこにいるか
価値があるか
(どこにもいないような気がしてたし価値なんかあるとは思えなかったから)
くりかえしくりかえし同じことをしましたが、
セックスはどぎまぎします、します、どぎまぎ、
はじめての人とは一瞬やり方がわからなくなるので、
思い出して、がんばるんです、
憑いたコヨーテを祓うために
祓ってコヨーテを殺すために

路上には死骸がいっぱいありました、
フリーウェイでも細い脇道でも、
ころがっていたりつぶれていたり、
あれは「ロードキル」っていうのだ
とだれかがわたしにいいました、
最初にきいたときの場所も、それをいった人の声も、覚えています、
その英語の発音も、覚えていますけど、
その人の名前は、忘れてしまいました、
どこの誰でもない、通りすがりの人でした、
こんなふうに使います、
「わたしは、見た、ひとつのロードキルを、路上で」
「ロードキルは、見慣れた風景、アメリカにおける」
「知ってますか、ロードキルは食べられる、料理本も出版されている」
しかしなぜROAD KILLなのか
KILLED じゃないのか
殺されてるじゃないか、殺してないじゃないか
SCHOOL KILLにそっくりなのに
悪意がぜんぜん感じられないじゃないか
正確にいえば
ROADKILL : Animals fatally struck by or ridden over by vehicles on roads and freeways
正確に訳せば
道、殺ス: 動物たち、致命的に、はねられた、ないしは轢かれた、車両によって、路上で、また高速道路上で
道、殺ス
わたしはわたしたちは、道、殺シ
わたしはわたしたちは、道、殺シテ
わたしはわたしたちは、道、殺サレ
わたしはわたしたちは、道、殺サレテ
ずたずたに引き裂かれて風に散って
いくのをジッとみつめます

で、わたしのみつめた道、殺スはこんなのです、
オポッサム。白い顔で目を閉じて口を開けている
スカンク。何マイルも先から死んだことがわかる、においで
アライグマ。身元がわかるのはしっぽだけ、あとは肉塊
ウサギ。リス。シカ。カラス。タカ。イヌ。そしてネコ。それから
種は特定できなかったがタヌキ大の動物、大と小、二匹同時に
推し測るに、母が仔をくわえて渡ろうとした瞬間
道、殺サレタ
(残りの仔も巣穴の中で死に絶えた)
それからコヨーテ
足のつっぱったのや力の萎えたのや
原型をとどめないのや血まみれのや
道、殺ス、殺シテ殺シテ、殺シキル

湾岸戦争がはじまって終わった年でした、
わたしは、コヨーテの体臭を嗅ぎつけるために
雨雲の観察するために
闇夜の音を聴くために
闇夜に眠らないために
コヨーテの肉を食って毛皮を着るために
やって来ました、
道の両側には戦勝の黄色いリボンが一斉に飾られてありました、
道の上、道の端では死骸たちが、
殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、
殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、殺セ、
受けた暴力をはね返して一斉に叫びました、
死の力をはね返して一斉に叫びました、

 

Wikipedia およびThe Sky Clear (A. Grove Day) から引用があります 

Read more from the November 2017 issue
Like what you read? Help WWB bring you the best new writing from around the world.